金子吉晴(維新政党新風)    行動保守の選挙担当として維新政党・新風に籍を置き真の戦後レジームからの脱却に邁進しています。

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前エントリーの補足

 コメント欄に前エントリーの第5の論点に関する説明のご要望があったので少し補足しておきたい。
 おっしゃる点は「それとも言い古された支出乗数の大小でお茶を濁すのだろうか。」の文意がよく伝わらなかったためだろう。
 この点は平成22年8月2日のエントリーで次のように書いたとおりである(リンクはこちら)。

財政支出は減っていないという主張に対する反論の相場は決まっています。それは全体では減っていないが公共投資の分は減っているということとそれを補う理屈として公共投資の乗数に比べそれ以外の支出(例えば扶助費)の乗数は低いということが主張されます。
 つまり財政学の教科書ではcを限界消費性向として,
「政府支出乗数」(government expenditure multiplier) 1/1-c >「租税乗数」(income tax multiplier) c/1-c
というようなことが必ず書いてあります。
 ここで前者は公共投資,後者は扶助費のような移転的支出が該当するので、本来なら前者は「公共投資乗数」、後者は「移転支出乗数」あるいは「福祉支出乗数」とでも言い替えた方が日本語としては分かりやすいのですが、元の原語がそうなっているのだからしょうがありません。

 しかし政府支出乗数>租税乗数はかなり机上の空論の類です。
 第1に、この差は最初の支出をカウントするかだけの違いですが,確かに政府の支出の相手方の限界消費性向がいつも同じならそういうことも言えるでしょう。
 しかし公共投資は資材の輸入比率が高いので最初から乗数ががくんと落ちるはずです。
 それに対して扶助費で元々限界消費性向の高い低所得者に支出し彼らが食事などの国内生産の比率の高いものに支出してくれれば、最初のうちは高い限界消費性向を保てるでしょう。
 したがって現状では政府支出乗数と租税乗数との差は元々,ほとんどないと言えます。
 第2に、経済効果を人々の満足度という視点で考えるなら公共投資のように人々の満足度に直接結びつかない支出を丸々カウントすべきかも疑問です。


 同じようなことを定量的に説明しているのが、「日本公共政策学会」の「公共事業と社会福祉サービスの生産・雇用誘発効果」(『公共政策研究』第3号(2003年10月))という論文であり次のとおりある(リンクはこちら)。

本研究では、景気浮揚のための代表的な政策である公共事業と高齢化社会において拡大が不可避である社会福祉支出の生産波及効果を拡大レオンチェフ乗数(通常のレオンチェフ乗数、すなわち中間投入を通じた生産波及効果、と消費活動を通じた生産波及効果の2つの効果の結合効果)を推計することによって比較分析した。この推計に当たり、取り上げる消費の範囲に関しては、2つの考え方がある。すなわち、消費の範囲を広くとる総最終消費支出ベースによる推計と消費の範囲を狭くとる家計現実消費ベースによる推計である。本研究では、両方の推計を行った。いずれの推計でも、社会福祉と公共事業の生産波及効果の差は1%以内におさまっており、社会福祉と公共事業の生産波及効果はほとんど同程度とみなせる。この結果は、短期的な景気浮揚のための公共支出の配分において、公共事業だけでなく、社会福祉も選択肢の1つになりうることを示唆している。

 「乗数」と「生産波及効果」が同じものなのかは当方もよく分からないが、まあ当たらずとも遠からずだろう。
 同じようなことは、「日本政策投資銀行」の「公的支出の経済波及効果―地域産業連関分析による考察―」(2003.7)という論文にも次のとおりある(リンクはこちら)。

公共事業、医療・保健部門等、個々の部門における最終需要増減の経済波及効果については、これまでも多くの研究があり、生産誘発効果に関する公共事業の優位は必ずしも当たらないこと、雇用創出効果を踏まえれば、医療、福祉部門が優位であることが検証されている。

 奇しくも両方とも2003年の研究であり、このころの流行りなのかもしれない。
  1. 2014/03/05(水) 18:03:22|
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