金子吉晴(維新政党新風)    行動保守の選挙担当として維新政党・新風に籍を置き真の戦後レジームからの脱却に邁進しています。

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"デフレ期賃金下落の原因と持続的賃上げの条件" 何のことはない、これは当方がいつも主張している「輸入デフレ論」そのもの!!

 「日本総合研究所」から「デフレ期賃金下落の原因と持続的賃上げの条件」と題してレポートが発表されているので、その内容を見ておきたい(リンクはこちら)。

デフレ期賃金下落の原因と持続的賃上げの条件
                       山田 久
                      (日本総合研究所調査部長)

Ⅰ はじめに
 日本の名目賃金(毎月勤労統計調査・現金給与総額)は90年代後半期をピークに15年以上にわたって下落基調をたどってきたが,このところ(2010年代の半ば近くになって)反転上昇の兆しがでてきている)。
 このところの名目賃金の上昇が持続的なものかどうかを判断するには,その前提として,90年代後半以降に名目賃金が持続的な下落基調にあった原因を解明する必要があろう。ここで注目したいのは,15年余りの期間にわたって,名目賃金が下落傾向をたどった経済は,主要先進国のなかでは日本以外に存在しないという事実である。この点を念頭に置きつつ,本稿では,なぜわが国で90年代後半以降つい最近まで名目賃金の下落基調が続いてきたかについて,マクロ経済や労使関係,賃金体系等の多角的な観点から,適宜,国際比較を踏まえながら考察する。

Ⅱ 持続的賃金下落の原因
(1)マクロ経済面からのアプローチ
 マクロ経済的観点からすれば,最もシンプルな賃金下落の原因として「労働需給の緩和」が想定できる。そこで,労働需給を示す代表的な指標である有効求人倍率と名目賃金の推移をみると,賃金がピークアウトした1997年後半以降景気回復局面は何度かあったが,その際労働需給が改善に向かっても,名目賃金は明確な上昇傾向に転じることなく基本的には下落基調が続いてきたことが確認できる。
 では,90年代以降のわが国において,労働需給の逼迫局面でも賃金の下落基調から脱却できなかったのはなぜか。マクロ経済学のロジックとしては,まず,要素価格均等化定理が考えられる)。つまり,アジア新興国の技術水準の向上により,日本とアジア新興国の生産関数が近似してきたことで,わが国の賃金率に対して新興国の賃金率に鞘寄せされる形で下落圧力がかかった,という説明が考えられる。この点を検証するために,輸入浸透度を説明変数に含む,業種別クロスセクション・データを用いた名目賃金決定関数を推計してみた)。要素価格均等化定理が働いているならば,輸入浸透度の高い産業ほど海外の賃金の影響を受け,下落圧力が強くなるはずである。実際,推計結果では,2000年時点で輸入浸透度の係数が10%水準で有意にマイナスとなっている(1996年の時点では有意性がみられなかった。図表2)。しかし,国際比較の観点からは,新興国の追い上げを受けているのは日本のみではなく,先進国共通の問題である。したがって,要素価格均等化定理に主要な原因を求めることは難しい。

 そのほか,大規模な経済危機の発生により,企業の先行き不確実性に対する防衛姿勢が強くなったことを,賃金伸び悩みの原因として想定できる。1997年の消費増税後,アジア通貨危機の発生を経て金融危機が深刻化し,大手企業ですら経営危機に陥るケースも続出した。そうした状況下,企業が将来の不確実性に備えて手元流動性を厚く保有するようになり,労働組合も景気後退時の雇用維持のバッファーとなることを期待して,賃金下落を容認するスタンスをとったという説明である。この説明は有力だが,リーマンショック後,欧米経済も経済危機に直面したが,賃金の伸び率が鈍化したとはいえ持続的な下落トレンドには転じていないことを踏まえれば,経済危機後の先行き不確実性の高まりにも,賃金下落の決定的な要因を求めることは難しい。

(2)労使関係からのアプローチ
 以上のように,オーソドックスなマクロ経済学の論理では賃金の持続的な下落基調を十分に説明できないとすれば,何がクルーシャルな要因か。結論からいえば,日本の労使関係の特異性に原因が求められる面が強いというのが本稿の仮説である。ここで注目したいのは,名目賃金,生産性,物価の関係についての国際比較である。
 図表3は,米国,欧州,日本について,労働生産性,一人当たり雇用者報酬,消費デフレーターの関係をみたものである。これをみると,米国と欧州では 3つの変数の間には基本的には同様の関係がみられる。つまり,労働生産性が上昇基調で推移するなか,一人当たり雇用者報酬が増加傾向を辿り,消費デフレーターも上昇傾向にある。しかし,日本については労働生産性が上昇基調で推移しているものの,一人当たり雇用者報酬および消費デフレーターは下落傾向で推移している。
 こうした日本と米欧とのパフォーマンスの違いは,雇用・賃金の調整パターンの違いから生まれていると考えられる。ドイツを欧州の典型として,日・米・独の部分調整型の雇用関数を推計すると,米・独では雇用の生産弾性値が相対的に大きく,調整スピードも速い。一方,日本の生産弾性値は小さく,調整スピードも遅い。半面,日本の賃金弾性値は大きいが,米国では小さく,ドイツではそもそもパラメータの有意性が認められない(図表4)。つまり,米欧は,景気悪化に対して,雇用量を調整することで対応する一方,日本は雇用量を維持して賃金で調整する傾向が強いことがわかる。そうした賃金調整を優先するあり方が,①要素価格均等化の圧力の強まり,②経済危機後の先行き不透明感の残存,等のマクロ環境のもとで,景気回復期でも名目賃金が上昇しないという,日本特有の状況をもたらしたと考えられる。



 端的に結論の部分から入ると、「デフレ期賃金下落の原因」は、最後の方にある「つまり,米欧は,景気悪化に対して,雇用量を調整することで対応する一方,日本は雇用量を維持して賃金で調整する傾向が強いことがわかる。」である。

 確かに「米欧」と「日本」でこのような相違が存在することは当方も間違いではないと思うが、しかしこれは「原因」ではなく、「原因」に対する「対策」である。

 全体の文章の中で「原因」と呼べるのは、一番最後の「①要素価格均等化の圧力の強まり,②経済危機後の先行き不透明感の残存,等のマクロ環境」の部分である。

 このうち後者の「②経済危機後の先行き不透明感の残存」については「経済危機」として、「1997年の消費増税後,アジア通貨危機の発生を経て金融危機が深刻化」と「リーマンショック」が挙げられているが、これらはいずれも1997年の平成不況突入後の事象だから、この「②経済危機後の先行き不透明感の残存」については「原因」に該当しない。

 したがって「原因」は前者の「①要素価格均等化の圧力の強まり」、つまり次の部分である。

では,90年代以降のわが国において,労働需給の逼迫局面でも賃金の下落基調から脱却できなかったのはなぜか。マクロ経済学のロジックとしては,まず,要素価格均等化定理が考えられる。つまり,アジア新興国の技術水準の向上により,日本とアジア新興国の生産関数が近似してきたことで,わが国の賃金率に対して新興国の賃金率に鞘寄せされる形で下落圧力がかかった,という説明が考えられる。

 何のことはない、これは当方がいつも主張している「輸入デフレ論」そのものである。
 しかしこれに対してはこの著者は次のとおりお定まりの反論をしている。

しかし,国際比較の観点からは,新興国の追い上げを受けているのは日本のみではなく,先進国共通の問題である。したがって,要素価格均等化定理に主要な原因を求めることは難しい。

 この点に関しては4月30日のエントリーで次のとおり書いたとおりである(リンクはこちら)。

また「そうしたデフレ論者に対して筆者は、中国からの安い輸入品が入っていた国は、日本以外にも多数あったが、デフレなのは日本だけであり、日本の金融政策が主原因であると反論していた。」とあるが、問題は「デフレ」かどうかではなく、経済が成長するかどうかである。
 というのは「デフレ」を脱却、つまり「一般物価」を上げることは簡単である。例えば増税か公共料金を引き上げれば良いだけである。
 我が国は1990年代後半からむしろそれと逆のことをやってきたから、「一般物価」が上がらなかっただけである。

 しかし「一般物価」を上げたところで経済、つまり実質GDPは成長しないし、その点では先進国は大差がない。
 このことは「世界の統計 2015」に掲載された「3国内総生産の実質成長率」というグラフを見れば、一目瞭然である(リンクはこちらの72頁)。

 もし欧米先進国と若干の差があるとすれば、それは「中国」との地理的、言語的及び産業構造的近接性のゆえである。


 この「その点では先進国は大差がない」については、その際には手抜きをして数字を示さなかったが、2013年8月7日のエントリーで次表のように示したとおりである(リンクはこちら)。

3-5 国内総生産の実質成長率(1)
                                            (単位 %)
国(地域)20012002200320042005200620072008200920102011
日本 a0.40.31.72.41.31.72.2-1-5.54.7-0.6
指数100.4100.7102.41104.87106.23108.04110.42109.32103.31108.17107.52
アメリカ合衆国1.11.82.63.5312.71.9-0.4-3.12.41.8
指数101.1102.92105.6109.3112.69115.73117.93117.46113.82116.55118.65
イギリス2.92.43.82.92.82.63.6-1-41.80.8
指数102.9105.37109.37112.54115.69118.7122.97121.74116.87118.97119.92
ドイツ1.50-0.41.20.73.73.31.1-5.14.23
指数101.5101.5101.09102.3103.02106.83110.36111.57105.88110.33113.64
フランス1.80.90.92.51.82.52.3-0.1-3.11.71.7
指数101.8102.72103.64106.23108.14110.84113.39113.28109.77111.64113.54


 これを見ると、米英はともかく、独仏とはほとんど差がないことが分かる。
 米国との差は完全に産業構造の相違であるが、英国との差もシティーを擁する金融業の実力の相違が出ているのだろうか。

 さて問題は「わが国の賃金率に対して新興国の賃金率に鞘寄せされる形で下落圧力がかかった」ことの論理的必然性であるが、当方はいつも書いているようにこれは存在しないと考えている。
 現実がそうなっているのは中国や韓国の為替操作がもたらしたものということである。
  1. 2016/06/13(月) 16:51:01|
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<<"財政政策を2~3年程度繰り返せば,その内デフレギャップは完全に解消" 大した根拠もなくそんなことを繰り返せば数年後には確実にスタグフレーションに陥るだろう!! | ホーム | "米高速鉄道 日本を破り中国企業が初受注も、米側が白紙撤回" 南シナ海における米中軍事摩擦に基づく米国政府の意向か?>>

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