金子吉晴(維新政党新風)    行動保守の選挙担当として維新政党・新風に籍を置き真の戦後レジームからの脱却に邁進しています。

←応援クリックお願いします。

"5兆円の給付金を配ったとして、GDP拡大効果が1兆円なのか、5兆円なのか、あるいは乗数効果が効いて7兆円に膨らむのか、事前に確定することは不可能(三橋貴明)" 限界消費性向は安定しているからそんなことはあり得ない!!

 8月5日のエントリーで、とあるブログにおける「政府支出乗数」の計算の誤りを指摘したところである(リンクはこちら)。
 この「政府支出乗数」については、安倍信者が過大に評価する傾向があり、それがアベノミクスへの称賛に繋がっていると考えるので、その誤りについては逐次指摘しておきたい。

 例えば「政府支出乗数」についてではないが、その関連として、三橋貴明は8月5日のエントリーで、次のとおり書いている(リンクはこちら)。

国民に対する給付金は、預金に回ってしまった場合、GDP拡大効果はゼロになります。もちろん、全額がゼロになるなどということはあり得ませんが、例えば5兆円の給付金を配ったとして、GDP拡大効果が1兆円なのか、5兆円なのか、あるいは乗数効果が効いて7兆円に膨らむのか、事前に確定することは不可能なのです。

 しかしこんなことはあり得ない。
 「給付金」は言い換えれば負の租税であるので、その「乗数効果」は、租税乗数の符号を反対にしたものである(ただ教科書によっては租税乗数を両方の意味に使うことを予定してか最初から正にしているものもある)。

 税制や貿易を無視した最も単純なケースを想定すれば租税乗数は、
△Y=
-c
1-c
△T
であるので、「給付金」の乗数は、
△Y=
c
1-c
△T
である。

 当然のことながら、限界消費性向cは安定しているから、「事前に確定することは不可能」などということはない。

 またこの場合、「政府支出乗数」と比較すると、分子の1がcとなっていて、学問上は「給付金」の乗数の方が小さくなると論じられる。
 しかし元々、「給付金」は低所得者に給付するものであって、そのcは1に近いから、その差はほとんどないと考えられる。

 むしろ最近では「給付金」の乗数の方が大きいのではないかという研究結果の方が主流である。
 2つの例を挙げる。

 一つ目として、「日本公共政策学会」の「公共事業と社会福祉サービスの生産・雇用誘発効果」(『公共政策研究』第3号(2003年10月))という論文であり次のとおりある(リンクはこちら)。

本研究では、景気浮揚のための代表的な政策である公共事業と高齢化社会において拡大が不可避である社会福祉支出の生産波及効果を拡大レオンチェフ乗数(通常のレオンチェフ乗数、すなわち中間投入を通じた生産波及効果、と消費活動を通じた生産波及効果の2つの効果の結合効果)を推計することによって比較分析した。この推計に当たり、取り上げる消費の範囲に関しては、2つの考え方がある。すなわち、消費の範囲を広くとる総最終消費支出ベースによる推計と消費の範囲を狭くとる家計現実消費ベースによる推計である。本研究では、両方の推計を行った。いずれの推計でも、社会福祉と公共事業の生産波及効果の差は1%以内におさまっており、社会福祉と公共事業の生産波及効果はほとんど同程度とみなせる。この結果は、短期的な景気浮揚のための公共支出の配分において、公共事業だけでなく、社会福祉も選択肢の1つになりうることを示唆している。

 「乗数」と「生産波及効果」が同じものなのかは当方もよく分からないが、まあ当たらずとも遠からずだろう。

 二つ目として、「日本政策投資銀行」の「公的支出の経済波及効果―地域産業連関分析による考察―」(2003.7)という論文にも次のとおりある(リンクはこちら)。

公共事業、医療・保健部門等、個々の部門における最終需要増減の経済波及効果については、これまでも多くの研究があり、生産誘発効果に関する公共事業の優位は必ずしも当たらないこと、雇用創出効果を踏まえれば、医療、福祉部門が優位であることが検証されている。

 これらだけを読んでも雲を掴むようでよく分からないが、講学的な理屈でもそのことは説明できる。
 この点は2010年8月2日のエントリーで次のように書いたとおりである(リンクはこちら)。

財政支出は減っていないという主張に対する反論の相場は決まっています。それは全体では減っていないが公共投資の分は減っているということとそれを補う理屈として公共投資の乗数に比べそれ以外の支出(例えば扶助費)の乗数は低いということが主張されます。

 つまり財政学の教科書ではcを限界消費性向として,
「政府支出乗数」(government expenditure multiplier) 1/1-c >「租税乗数」(income tax multiplier) c/1-c
というようなことが必ず書いてあります。
 ここで前者は公共投資,後者は扶助費のような移転的支出が該当するので、本来なら前者は「公共投資乗数」、後者は「移転支出乗数」あるいは「福祉支出乗数」とでも言い替えた方が日本語としては分かりやすいのですが、元の原語がそうなっているのだからしょうがありません。

 しかし政府支出乗数>租税乗数はかなり机上の空論の類です。
 第1に、この差は最初の支出をカウントするかだけの違いですが,確かに政府の支出の相手方の限界消費性向がいつも同じならそういうことも言えるでしょう。
 しかし公共投資は資材の輸入比率が高いので最初から乗数ががくんと落ちるはずです。
 それに対して扶助費で元々限界消費性向の高い低所得者に支出し彼らが食事などの国内生産の比率の高いものに支出してくれれば、最初のうちは高い限界消費性向を保てるでしょう。
 したがって現状では政府支出乗数と租税乗数との差は元々,ほとんどないと言えます。

 第2に、経済効果を人々の満足度という視点で考えるなら公共投資のように人々の満足度に直接結びつかない支出を丸々カウントすべきかも疑問です。


 「政府支出乗数」と「給付金」の乗数のどちらが大きかろうと当方には関心がないが、言いたいことはアベノミクス信奉者の経済理論には我田引水的な間違いが多いことである。
  1. 2016/08/14(日) 08:36:31|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<"負け犬の成長否定論者たち(三橋貴明)" 彼らからすれば当方のように外国が悪いと言う人間の方が経済的自虐史観らしい!! | ホーム | "21世紀初頭の日本の物価下落や賃金低下は対外的な問題で起こったこと" 今月10日のエントリーと内容的に同じであるが、我が国では「当たり前」という誤った考え方が横行しているので何度でも取り上げたい!!>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ccp58800.blog25.fc2.com/tb.php/2850-4eba0cb2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)